反復性肩関節脱臼

反復性肩関節脱臼(はんぷくせいかたかんせつだっきゅう)

このような症状はありませんか?

日常のなかで、以下のような肩の「外れそうな不安感」や脱臼に悩まされていませんか?

  • 【ちょっとした動作で肩が外れる】
    スポーツ時だけでなく、バンザイをする、高い所の物を取る、寝返りを打つ、着替えなどの軽微な動作で肩が抜けてしまう。
  • 【肩が外れそうな強い恐怖感(不安感)】
    腕を後ろに引いたり、外側に開く体勢になると「また外れるかもしれない」と怖くて力を入れられない。
  • 【自分で肩をはめ直したことがある】
    脱臼しても、自分で動かしているうちに「コトッ」と元に戻るようになった。
  • 【脱臼した後に肩の重だるさが残る】
    何度も外れるうちに、普段から肩の不安定感やだるさが抜けなくなった。

これらはすべて、肩関節を本来の位置に留める構造が破綻しているサインかもしれません。

反復性肩関節脱臼とは?

肩関節は体の中で最も可動域が広い反面、構造的には「浅い皿の上に大きな球が乗っている」ような非常に不安定な構造をしています。
スポーツや転倒などで一度肩を脱臼(初回脱臼)すると、関節のフチについている軟骨のクッション(関節唇)や靭帯が骨から剥がれてしまいます(バンカート損傷)。これが自然治癒せずに壊れたままになると、肩を固定するストッパーが機能しなくなり、軽い力でも繰り返し脱臼するようになります。この状態を「反復性肩関節脱臼」と言います。

主な原因

1. 初回脱臼の不完全な治癒(若年層に多い)

10代〜20代で初めて肩を脱臼した場合、関節包や靭帯が柔軟であるため破れた組織が元通りにくっつきにくく、80%以上という非常に高い確率で反復性に移行すると言われています。

2. コンタクトスポーツやオーバーヘッドスポーツ

ラグビー、サッカー、バスケットボール、格闘技、スノーボードでの転倒などで肩を強打することがきっかけになります。

症状の特徴・進行

初期(初回〜数回)

脱臼時に激しい痛みを伴い、整復(はめ直す)まで強い痛みが続きます。

進行期(癖になった状態)

何度も繰り返すうちに痛みの強さは減りますが、あくびをする、バンザイをする、寝返りを打つといった日常生活の何気ない動作でも簡単に外れるようになります。

長期的リスク

外れるたびに骨同士がぶつかり合い、関節の骨(関節唇や関節骨)が削れていきます。これを放置すると、若くても将来的に肩関節の軟骨がすり減り、変形性肩関節症へと進行してしまいます。

検査・診断方法

問診・Apprehension test(不安感テスト)

腕を外側に開いて後ろに反らしたときに、患者様が「外れそう」という不安感を訴えるかを確認します。

レントゲン(X線)検査

骨折の有無や、脱臼によって骨が削れていないか(ヒル・サックス損傷など)を確認します。

MRI検査

軟骨である「関節唇」の剥がれ具合や、周囲の靭帯・腱板の損傷状態を正確に把握します。

当院での治療方法

当院では、関節の安定性を高める「専門リハビリテーション」を中心とした保存療法を行います。(※骨の摩耗が著しい場合や極めて不安定な場合は、地域の連携病院での手術検討をご提案することもあります)

専門リハビリテーション

構造的ストッパー(靭帯・関節唇)が傷んでいる分、筋肉という「動的ストッパー」を徹底的に鍛え上げてカバーします。

  • 【インナーマッスルトレーニング】
    肩ブレを抑える「腱板(ローテーターカフ)」をゴムチューブなどを用いてピンポイントで補強します。
  • 【肩甲骨・胸郭の可動性改善】
    肩甲骨が正しい位置でスムーズに動くように周囲の筋肉を整え、肩関節だけに過度な角度がかからない体の使い方を再学習します。
  • 【トレーニング】
    関節の位置を感じるセンサー機能を高め、外れそうになった瞬間に瞬時に筋肉が収縮して守れる反応力を養います。

装具・テーピング指導

スポーツ復帰時などに、外れやすい角度へ腕がいかないようサポートするテーピングや装具の指導を行います。

日常生活での注意点

  • 【危険な腕の位置(外転・外旋)を避ける】
    腕を真横に上げて後ろに反らす姿勢(投球フォームのような体勢)や、つり革に捕まったまま踏ん張る動作は脱臼を誘発しやすいので注意しましょう。
  • 【自分で無理に強い力ではめ直さない】
    無理やり戻そうとすると、周囲の神経や血管、骨をさらに傷つける恐れがあります。

よくある質問

リハビリだけで「脱臼の癖」は治りますか?

筋力を強化して肩の安定性を高めることで、日常の脱臼頻度や不安感を大幅に減らすことができます。特に軽度の不安定性であればリハビリで大きく改善します。ただし、骨の削れが大きい場合やスポーツでの完全復帰を目指す場合は、手術療法(内視鏡での関節唇修復術など)が適している場合もあるため、状態を見極めて最適な選択肢をご提案します。

一度自分でハマったら、病院には行かなくても良いですか?

受診を強くお勧めします。元に戻ったように見えても、内部で関節唇が剥がれていたり骨が欠けている可能性が高いです。放置するとますます外れやすくなってしまいます。

受診目安

すぐに受診が必要な状態

  • 現在肩が外れていて元に戻らない、激痛がある。
  • 外れた後から手や腕に痺れがあり、力が入らない。

近いうちに受診をお勧めする状態

  • 何度も肩が外れたことがある。
  • 腕を上げたときに「脱臼しそう」という恐怖感があってスポーツや日常動作に集中できない。

まとめ

反復性肩関節脱臼は、「癖だから」と放置しておくと関節の軟骨や骨の削れが進行し、将来的な関節の変形につながるおそれがあります。
インナーマッスルの強化をはじめとする専門リハビリによって肩の安定性を向上させることが可能です。
外れやすさや恐怖感でお悩みの方は、当院までお気軽にご相談ください。

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